prasthanaSS24 last del. コアの所在について。

prasthana co., ltd. 代表/デザイナーの武井です。

春来ましたね。
3月に入ってから暫くの間はわりと寒い日が多く、全然気が進まないけど冬物に手を伸ばしてしまう、通称季節の足踏みを例年より感じていたような気がしますが、下旬になって漸く春めいてきました。
というかむしろ、数ヶ月先回りして初夏めいた気温の日もあったりしてます。
確実に季節が進んでいる実感。
この間、3月中旬から2週間ほど、来季AW24の展示会を行っていた関係で、実店舗の営業はお休みしておりました。
お客様方にはご不便をおかけしました。
現在はしっかり平常通り営業再開してますので、改めて宜しくお願い致します。

展示会という場は、お馴染みの友人達や半年に一回お会いする方々、はじめましての方まで、ありがたいことに沢山の交流が毎度生まれますので、prasthanaの最新コレクションのお披露目、という名目ではありますが、大いなるインプットの機会にもなっています。
お互いの現状報告から始まり、新たな一歩を踏み出す決意を聞いたり、継続の先にあるポジティブなビジョンを共有したり、ケースによって様々ですが、まぁ素晴らしき人達に囲まれているなと毎回実感します。
月並みですが、僕も自身の活動をしっかりと突き詰めていかねばと、決意を固くするには余りある、収穫の多い時間となりました。
この期間に会えた方々、いつもありがとうございます。

そんな展示会中に生まれた様々な会話の中で、特に印象的だったものがありました。
コア(軸)の所在について。
これはですね、わりと最近、僕自身考えることが多かった内容でして、要するにその人ないし団体、またはブランド、アーティスト、、など形態はなんでも良いのですが、その活動/生き方の指針たる軸の部分、言い方を変えるとアイデンティティの話です。

「一貫した軸が存在しているか」

昔、とある方の発言に大いに共感したことがありました。
曰くメンズの衣服には背景にカルチャーがないとダメ、とのこと。
ジェンダーで価値観を分けるのは個人的にはナンセンスと思う反面、一般論としてある女性脳と男性脳の違いという概念。
古くから「女性はファッション、男性はスタイルを身に纏うべき。」という言葉もありますが、ここで言われている「ファッション」は流行、「スタイル」は文化、と僕は捉えています。

一例としてちょっと前の話ですが、ファストファッションの興隆というのは、まさに短期的な流行としてのファッションを流動的に身に纏うという様式、そして尋常じゃなく早いサイクルでそれを消費していく、ということでした。
そこにいる消費者達の人物像って、(そのタイミングにおいて)ナウいお洒落な人。
ナウって言いますか?まぁいいや。
で、このナウなメンズも若い頃は良いのかもしれませんが、はたして成熟した男性に対してこの価値観って同じように通りますかね。
少なくとも、これまで僕が生きてきた中で得た感覚におけるイケてる男性像と、こうした人物像って大いに乖離がありまして、その乖離の正体がカルチャー=文化の有無なのだと思います。
インスタントな創作物、言ってしまうとAI的な感覚で自動生成されたような衣服に、布と糸と付属以外の特別な価値が存在し得ないことなんて、まぁ想像に難くないですよね。
というか、そのようなマーケットにはそもそも「文化的価値」なんて必要なくて、いかに効率的に消費を回すか、というテーマに主眼が置かれているわけですから、そりゃそうだよねって話。
ファストフードに栄養を求める人なんていないのと同じです。

誤解が生じると嫌なので言っておきますが、女性のファッションに文化的な価値が無い、或いは必要無いなどとは全く言っていませんよ。
ですが、女性の場合「とりあえず可愛いからOK!!」みたいな感覚が占める割合が男性のそれよりも多いと思っていて、そんなアブストラクトでフレキシブルな感性こそが「女性的なオシャレ」を実現する要素だったりするのかも、と個人的に思ったりします。
どちらが良い悪い、ではなく、感覚的な部分の差異は少なからずあるはずなので、意味合いとしてはそういうことです。

そして、「スタイル=文化」とか言うと、職人がボロボロのワークウェアを着てる、みたいなイメージが浮かぶかもしれませんが、勿論それも一つ。
だけどその限りではなく、その人の生き方のベクトルとか傾倒するカルチャー、または志向することとか、そういった各々の軸の部分がゆっくりと表出してその人のスタイルとなる。

ちょっと余談になってしまいますが、職業柄、日々様々な撮影をします。 
そんな中で出会う所謂プロのモデルの人って、我々一般人の感覚からすると、体型が異次元級に整っているのはもはや基本的な条件、と言っても良いくらい大抵みんなそんなレベル。
そうなってくると選定基準は顔か、ということになりそうですが、違うんですね。
ここに奥深さがあるのですが、仮に全く同じ身体のサイズ、更に顔の整い方も近しいレベルの2人がいたとします。
その2人に衣服を着せてみて、2人とも同点、どっちも100点満点、かというとそんなことはまずなく、絶対的な優劣がつくものです。※一応注釈で、この優劣の基準はその案件に対しての評価です。
この差異こそが、個人が内包する軸(コア)に起因するもので、「雰囲気かっこいい」の「雰囲気」の部分、それは目鼻立ちや身体的スペックとは別次元にある、明確な言語化は難しいけど確かに存在する何か。

例えばマシューベラミーにスケーターファッションを着せるより、駒沢公園にいるスケーターに着せる方がなんかかっこいい。はず。
その人が内包するカルチャー、それに紐付くコアが滲み出て、その人のスタイルとなるわけで、「服を着こなす」とはそうした、ちょっと大袈裟に言うと、「その人の人生の積み上げ」によって実現するのだと思います。

これは服飾に限らず、音楽、芸術、食とか建築とか、、様々な創作/表現においても全てに共通する概念だと僕は考えていますが、要するにブレないコアを持っていないと結局はダメだよね、ってことです。
超局所的な話ですが、prasthanaが継続的に提案を続けている、ドロップクロッチのサルエルパンツがあります。
僕としては股上の深いこの手のパンツって大定番、自分のワードローブに常にあったもので、これからの人生にも絶対的に必要なピースなのですが、一般的にはそうでもないようでして。
なんならシーズンによっては、支持を得ることができず量産に至らない、所謂ボツることもある、商売的に言ったらマジで非効率的なプロダクトなのですが、やり続けています。
それは何故かと言うと、まさに自分のコアの所在を、一側面ではありますがそこに見出しているからなんですね。
そして、それによって得られるメリットを僕自身が享受しまくっている以上、prasthanaとしてチャレンジを続けるべき部分と捉えています。
このチャレンジというのは言うまでもなく、お客様方に喜んでもらう未来を実現することです。
エゴイスティックに、意固地になってやり続けているのではなく、本心から「めちゃめちゃ良いから共有したい!!」という極めてピュアな動機です。

そんな感じ。
展示会場における何気ない会話から広げてけっこう書いてしまいましたが、とても大事なことだと思っています。
僕自身、衣服に限った話ではなく消費者として何かを選ぶ時、作り手のカルチャーが垣間見えると嬉しいですし、けっこうデザイナーの発言とか立居振る舞いを観察したりします。
せっかく手に取るのであれば、バックボーンまで理解することができると、単純に面白味も増すと思っています。
まぁ兎に角、皆様のスタイル形成に一役買えるような存在になれるよう、引き続き精進していきます。

漸く本日のテーマ、ここからはさらっといきます。
SS24最終del.が完了しましたので紹介させて下さい。
SS最終なので、軽衣料が中心となりますが、表現するべきことを見据えてどっしりと軸足を置いた、骨太なラインナップとなっているはずです。
以下、ご確認下さい。

 

tech jersey sleeveless parka

 

tech jersey nosleeve

 

hooded over shirt

 

slick shirt BC.TALL(GRAPHIC)

 

slick shirt BC.TALL(PLAIN)

 

lounge shorts

 

培ってきた様々な経験や、そこから作り上げた自分なりのロジックのもと、大変提案性の高い、且つ個人的にも満足度の高いプロダクトをラインナップできています。
詳細に関しては、各商品ページをご確認下さい。
既にEC、店頭ともに動きが出ております。
誠にありがとうございます。
カラー、サイズ欠けが発生している品番も多いので、気になるものがありましたら是非早めにチェックしてみて下さい。

僕自身、ここ数日の季節の進みにかなりSS気分が高まっています。
結局、洋服が一番楽しいですからね。
共有頂けますと嬉しいです。

宜しくお願い致します。