AMBIVALENTな2025≒2019 [PEI-003 AVIATOR] ORDER MEETINGについて。
prasthana co., ltd. 代表/デザイナーの武井です。
盛夏ですね。
今年も。7月。末。
2025年も完全に下半期に突入。
いやはや、時間経過のクレイジーな速度について狼狽しているという心持ちを話題にすること、それをある種タブーとして意識的に除外し、ここ直近の記事は書くようにしていたのですが、これはですね、もう看過は不可ですね。
文章を書くにせよ、人に会うにせよ、
「それにしても暑い(或いは寒い)ですね。」
とか
「時間が経つのが早くて云々、、」
とか
全人類共通の暗黙の定型文かの如く頻出するこの類(時節)の話題はなんというか、言っても仕方ない、端的に表現すると生産性のまるで無いテーマですから、極力自身が発信する言葉をはじめ、諸々のチョイスから外すことで、合理的で無駄のないストイックな佇まいを持った人間像を世の中に印象付けたい。
なんて思っているわけではないですが、それにしても何かしらを生み出し得るものではない、ということは疑いようもない事実でありますから、殊更に言及する必要性は皆無なのですがね、まぁ、口を衝いて出ちゃいますね、、というくらいの尋常ならざるスピード感。
以前、一年ほど前だった筈ですが、こんな時期に書いた記事内で和菓子について触れたことがありました。
その季節の移り変わりに即した商品構成から、日本人特有の繊細な感性を感じずにはいられない、みたいな話。
初夏時期に登場する「若鮎」という品番ね。
気付けば2025年もそんな時期を既に通り過ぎたわけで、近所の和菓子屋さんのラインナップも刷新されて久しい。
若鮎美味しいんで、一消費者の視座に立つと、夏の到来は只々歓迎なのですけど。
なんだろう、この焦燥感、いや漠然とした不安感、という表現が正しいのだろうか、
兎に角「もう2025年も下半期、!!やばいよねー、、」なわけですよ。
この「やばい」の実体を的確に言語化することは難しいのだけど、少なくとも「もう下半期!よっしゃ!」ではないわけ。
考えてみたら2025年て、子供の頃の感覚でいくとまぁまぁな未来ですからね。
映画「ブレードランナー」は1982年の作品ですが、劇中で設定された舞台は2019年です。
もう既に6年前の想定。
蓋を開けてみると、車が空を飛んではいないけど、他方で人工知能が我々の生活の至る所に確実に入り込んできてはいる。
あるべき、もしくはこうなっているであろうと想定していた未来の姿と現実の間の距離感、そしてそこに生きる、理想とした自分の姿とリアルな自分自身。
これらに何かしら乖離が存在していると「やばい」という感慨に至るのかもしれない。
リアルな2025年は、DIGITAL(革新)とNON-DIGITAL(情緒)が入り混じる、AMBIVALENTな性格を有した時代であった。
ブレードランナー劇中では確かに、フィルム写真、新聞のようなアナログ的表現が随所に使われており、所謂「完全にデジタル化された未来」とは異なる世界が描かれていますが、これらは実際のところ、当時の技術的制約や美術セットの都合による部分が大いに影響していて、「人間がアナログを必要とする心理的ないし文化的背景」までを意識していた、とは言い難いと思います。
2025年を生きる我々は、 その飛躍的な技術革新の渦中に居て、寧ろ「アナログ的なものに回帰したい衝動」を持っていますよね。
レコードとか本とか、題材はなんでも良いのですが、これらは単なるノスタルジーではなく、「物質性」や「不可逆性」への信頼とも言えるわけです。
そうした人間の「情緒的なアンカー」としてのアナログの必然性、とでもいうべきだろうか。
兎に角、この辺の繊細なディテールを1982年のリドリー・スコットは描き切れていなかったですね。
(ここでは強引ですが、2025年≒2019年とさせて下さい笑)
今僕たちは紛れもなく「子供の頃に空想した未来」を生きていて、その一側面、あくまで局所的な話だけど、例えば欲しい情報は如何なる手段を用いても容易に入手できるようなテクノロジーを得ました。
画面を通して見たアブストラクトでデジタルな何かを、あたかも自身の知見のように扱ったり語ったりするのだけど、かたや布と糸と付属を用いて人の手で作られる一着の衣服、そんな極めてアナログな創造物に相変わらず夢中だったりもする。
更には、世はもう何波目か分からないけどビンテージブーム?らしく、過去に無価値とされていたようなものに驚くような価格がついていたりする。
「何版使って刷ってるの?」でお馴染みの、極彩色のメタル関連のTシャツとか、一昔前の感覚だとそれらを着用するというモチベーションを下支えするのはその人のアイデンティティでしかなかったはずが、今は若者(彼らはREIGN IN BLOODすら知らないようだ)が「お洒落なもの」として手に取り、そしてその様をSNSで発信する。
如何なるNON-DIGITAL(アナログ的創造物)についても、その現代解釈における価値を拡散するのはDIGITAL(先端技術)であって、デジタル⇄アナログをはじめ、合理性⇄非合理性、違和感⇄不調和、、そんな様々が綯い交ぜ状態の2025年。
あぁそうそう、ちょっとネガティブ方面からの物言いになってしまうけど、選挙のシステムなんかも正直違和感しかないですね。
近年SNSでの訴求がどの政党も当たり前のことになりましたので、人々はPCなりスマホなり、任意のデバイスでそれらの発信をキャッチして、酷暑の中、さらには連休中日という謎のタイミングに設定された当日、投票所に赴き、(時間帯によっては列に並んで)紙と鉛筆で一票入れる。
なんだこれ?これに関してはマジで過渡期なんだと思いたいです。
常に人の傍に横たわる漠然とした焦燥や不安の正体、それは時代の変遷や各人の置かれた状況によってその姿を目紛しく変えるもの。
先述したような理想と現実のギャップかもしれないし、人間関係かもしれないし経済的なことかもしれない。
はたまた自分だけでなく家族の健康状態のことだったりするかもしれないし、対岸の火事ではもはや片付けられない、終わらない戦争が要因だったりするのかもしれない。
いつも以上に話がとっ散らかってしまいましたが、
兎に角何が言いたいかというと、一日一日を大切にしっかりと生きること、そして何物にも依らず自主自立のスタンスを研ぎ澄ましていくことで、多くの問題、或いは問題のように見えている様々な事象は、ゆっくりとした歩みではあっても概ね解決の方向に向かっていくのだと思っているのですよ、強引にまとめますけど。
話を冒頭の題材に戻して、時間経過の速度云々、、くらいのことにいちいち心を乱されるのも癪ですからね、それこそ
「犀の角のようにただ独り歩め」
人間が抱える不安、焦燥、悩み、、なんて、宇宙規模で考えたら鉛筆の先でチョンと打った「・」ほどもないような些細なことの筈ですから。
高い精神性を携えていきたいものです。
さぁそんな感じで、やっと本題いきましょう。
不定期で展開している prasthana の号外、期中で提案する特別なプロダクトである
[PRASTHANA EXTRA ISSUE] 略して [PEI]
prasthanaAW25立ち上がりを目前にしたこのタイミングで
第三弾リリースとなる [PEI-003 AVIATOR] を発表致します。
プロダクトネームはAVIATOR=飛行士、としていますが、一般的な呼称は、アビエイターキャップとかパイロットキャップ、飛行帽、といったカテゴリーのものですね。
要するに耳当て付きの帽子、キャップと言うからには勿論バイザー(ツバ)が付属しますが、基本的にはドットボタンを使用して跳ね上げて着用するスタイル、且つ耳当ては頭頂部で留めることもできる2WAY仕様、というのがざっくりとした製品概要。
素材には日本が誇るレザーの産地、姫路で生産されるベジタブルタンニン鞣しのホースレザーを厳選して採用し、prasthana、というか僕が絶大な信頼を寄せる国内屈指のレザーアルチザン池永さんに縫製を依頼、そして細部の付属にこれまた絶大すぎる信頼を寄せる iolom 坂本さんに特注したパーツを使用した超スペシャルなピースとなります。
これまでにもレザーを用いたプロダクトは継続して提案をしてきましたが、その中でも特にヘッドウェアカテゴリーに関しては、お客様からも断続的にお問い合わせを頂いている、言わば prasthana というブランドを象徴する一側面であるということは疑う余地のないこと。
そんな積み重ねの上に、更なるクリエイティビティと飽くなき探究心によって、超絶マニアックな作品が爆誕と相成りました。
「マニアック」と表現したことと、「マニアック」と理解していながら何故この企画を実現したのか、それには勿論確たる理由があります。
まず「マニアック」たらしめるのは何故かと言うと、デザイン、至極シンプルにその見た目と、馴染みの薄さ、ですね。
文面に加えてルックをご覧頂けたら一目瞭然のことと思いますが、まぁ万人が手を伸ばすものではないよね、というのが率直に殆どの方が持たれる印象だと思います。
大人しくキャップ(これに関しては実績もありますからね)とかやっておけばええやん、というのが大方の見解でしょう。
これには僕自身異論はないです。
では何故、「マニアックなもの」になると分かっていながら企画を進め、今日に至っているのか、この理由も実にシンプルで
「めちゃめちゃ良いから。」
もう少し踏み込むと
「僕自身がその良さを深く理解しているから。」
実は、立ち上がり目前となっている prasthanaAW25 コレクション内においても、耳付きのヘッドウェアをラインナップしています。
厳密に言うとそちらはニットなので、その製品観ならびにカテゴリーもまるで別物にはなるのですが、モチーフとしては同一のもので、着用した佇まいにも近しいニュアンスがあります。
AW25の企画をしていたのは24年末とかそのくらいの時期なのですが、その時点で僕の中では
「AW25で提案するヘッドウェアはこれしかない、!!」といったレベルで確信を持っていました。
実際展示会からその後の受注会という流れの中で、ご来場頂いたバイヤー様をはじめ皆様方の反応を拝見していましたが、このアイテムに対するほぼ全ての方の感情の推移はこんなような感じでした。
バイヤー氏
「いやー、これは自分には似合わないと思います。」
僕
「まぁまぁ、せっかくなんで被るだけでも被ってみて下さい。」
バイヤー氏
「うーん、、、あれ?意外といける?ん?」
※ここで僕がおもむろにフラップを頭頂部で留める。
バイヤー氏
「あれ?意外と良くない?ん?]
僕
「、、、でしょ?」
衣服のプロたるバイヤー様方を含め、ほぼ全ての方がまず第一印象で一歩引く。
これがスタート。
一歩引くのだけど、いざ着用してみると不思議と皆さん似合ってしまう。
日程が進むにつれ、この着用者の感情の推移は僕の中で確たる成功体験として積み上がっていき、同時に自分が得ていた感覚が正しいものであった、という確認にもなりました。
なんだろうな、確実な分析は正直追いついていないのですが
まず一見飛ばした印象を受けるのだけど、形状としての歴史的文脈がしっかりとあるからこそ、それによってもたらされる「モノとしての説得力」がありますね。
そして、カバーする領域が広い故に得られる小顔効果、
言い方を変えると全体のバランスを整ったものに演出してくれるということ。
あとこれも大事、イヤーフラップを跳ね上げて着用するスタイルが重要度としてはデフォルトの状態と同じか、なんならそれ以上に感じられるくらい、2WAYとしての意義が明確に存在すること。
更に無骨なイメージと相反する、ある種のキャッチーさ、可愛らしさと絶妙な抜け感を併せ持っていること。
これらは凡百のヘッドウェアでは到底表現し得ない領域のものだと思います。
日常的に被り物を手に取られてきた方は勿論のこと、「普段帽子は被りません」という方にも絶妙にフィットするケースに本当に数多く立ち合うことができ、少なくとも prasthana をご覧頂いているような感度の方々には、確実に響く筈であろう、と自信を深めることができました。
そんなストーリーがありながら、より強い一手として、そしてPRASTHANA EXTRA ISSUEとして一切妥協の無い表現をする為に、デザインはもとより、パターン、素材、縫製技術、それに纏わる付属含めた全ての要素を突き詰めて実現したのが本作 [PEI-003 AVIATOR] となります。
下記オフィシャルのリリースです。
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PRASTHANA EXTRA ISSUE 【PEI-003 AVIATOR】
prasthanaがこれまでの活動を通して磨き上げてきた知見とデザイン哲学を総動員して企画を行い、築き上げてきた各分野のスペシャリスト達との関係値によって実現したPRASTHANA EXTRA ISSUE 第三弾リリース。
一般的にフライトキャップやアビエイターキャップと呼称される、イヤーフラップが特徴的なヘッドウェアをモチーフに、細部にまで拘り抜いた仕様で作り上げた今作。
メインマテリアルには日本国内におけるレザーの生産地として名高い、兵庫県姫路市の
タンナーがベジタブルタンニン鞣しによって生産するホースレザーを採用。
オイル含有率が高く、しっとりとした高級感と、一目でそれと判断できる品質の高い馬革ならではと言える存在感/佇まいを併せ持った、名だたるデザイナー達に愛される極めて
美しい素材。
縫製は国内外のトップメゾンの仕事も請け負う、国内屈指のレザーアルチザンに依頼。
技術の高さは言うに及ばず、特殊ミシンを使用して行う「オーバーロックステッチ」を
各所に配置し、多くの場合便宜上用いられる「剥ぎ目」という概念から、
「意匠として意味のある切替線」へと昇華した高難度の縫製仕様を、至高のクオリティーで実現している。
フロントのドットボタンカバー、バックのアジャスターバックルには、アルチザン
ジュエリーブランド「iolom」デザイナー/職人の坂本氏の協力を得て作成したオリジナル
パーツを付属。
素材にホワイトブラス(白真鍮)を用い、硬質で美しい佇まいを抽出したハシゴ型バックルと、素材は同様ながら特殊な加工工程を踏むことで極めてアーティスティックな表情を
持たせたドットボタンカバーは、手仕事でしか表現し得ない感慨をもたらしており、
この作品のキャラクターを強烈に印象付ける要素として存在感を放つ。
作品を構成する全ての要素に一切の妥協は無く、prasthanaが考える
「美しい創造物」を完璧な形で作り上げた【PEI-003 AVIATOR】
ABOUT PRASTHANA EXTRA ISSUE
prasthanaとして年に2回、SS及びAWで発表するインラインのコレクションと別軸で
期中スポットアイテムとして製作する特別なプロダクトを
PRASTHANA EXTRA ISSUEの名称にて展開。
[EXTRA ISSUE=別冊]の意味合い通り、インラインにおける創作の限りではない、言わばMD的観点度外視で企画を行う。
プロダクトは全て国内屈指の技術を持つ職人による手仕事で生産され、デザイン偏重に
陥らない、衣服としての品質の高さも妥協なく追求する。
[form,function&idea]=[形態,機能,発想]
prasthanaの創作におけるフィロソフィーにフォーカスしつつ、希少なファブリックや
専門性の高い仕様などを駆使し、インラインとは異なる価値創造を目指す。
展開範囲は自社直営ならびに限定した取扱店様のみとし、販売方法は都度定めるが、
受注や数量限定生産を基本とする
「限られた時間/場所でしか手にすることができない特別な作品」
PRODUCT NO.:PEI-003
PRODUCT NAME:AVIATOR
COMPOSITION:HORSE HIDE (VEGETABLE TANNING)
DELIVERY:2026.2-2026.3
PRICE:ASK
prasthana co., ltd.
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PEIの過去作同様、今作もORDER MEETING(受注会)を開催します。
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prasthana sendagaya store
8月2日(土)-8月11日(月)
(期間中も水曜、木曜は定休日となります。)
Amanojak. 北千住店
8月16日(土)-8月24日(日)
(詳細はAmanojak.さんへお問い合わせ下さい。)
※追加の可能性があります。
確定次第公開致します。
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納期に関して
現段階では、想定する内で最遅のタイミングをお知らせしています。
今作も有難いことに、熟練の職人が全ての工程を一人で請け負ってくれる予定。
この方は前述している通り、国内外のあらゆるブランドからの依頼を日々こなされていて、生産キャパの確保が非常に難しい、という実情があります。
確定発注数量含め、素材の確保諸々、様々な要素が上手く合致すれば、大幅に早まる可能性もなくはない、のですが、確実なことはいざ蓋を開けてみないとなんとも、という部分が大きい故、取り敢えず現段階ではこのようなインフォメーションとなってしまうことをご理解頂けると幸いです。
早まったらラッキー!くらいに構えておいて頂けると、みんなハッピーかと思います。
あとプライスに関して
現段階では公開しません。
というか、正直言いますと最終調整中でして、本日7/30の時点では確定していません。笑
改めて、職人達との取り組みとなると、この辺の難易度は飛躍的に高まるなと。笑
と、言いつつもう間も無く決まりますので、会期中、勿論店頭ではお伝えしますし、ご質問頂ければお答えします。
是非ワンアクション、お待ちしています。
今目の前にこの作品を置いて本JOURNALを書いていますが、改めて「美しい創造物」と思えています。
それは、例えば徹底した管理体制によって大量生産されたようなプロダクトの持つ
「合理性を下敷きにした美」とは対極に位置する、ある意味で非合理的かもしれないけど、携わった人間の「手の痕跡」を宿した
「クラフツマンシップの真髄」が生み出す美しさ。
相変わらず偏屈な販売方法を採用しますので、多くの方にご覧頂く、ということは叶わないと思います。
反面、この情報を受信して頂き、気に留めて頂いた方には、きっと深く共鳴頂けるものと信じています。
いつも通り、遠方の方には個別に出来る限りのご対応を致しますので、電話なりメールなり、ご都合の良い方法で問いかけてみて下さい。
それでは、短い期間ですが、この比類なき価値を共有できることを楽しみにしております。
宜しくお願い致します。