時代の変遷と変わらない価値。p|p preview eventについて。
prasthana co., ltd. 代表/デザイナーの武井です。
5月末に差し掛かるこの時期、例年だとGW辺りから夏日が増え、向こう9月いっぱいまでの時間をなんだかんだ一夏、と一緒くたにしていたような印象があったのですが、どうやら今年はその限りではないようで、暑かったり少し肌寒かったり、雨降ってみたり紫外線強めだったり、なかなかに表情豊かな四季のある国で暮らしている、という実感の中にいます。
、、5月末ってこんな感じでしたっけ、?
けっこうまだまだ長袖、寧ろ軽いアウターくらいは必要な日がほとんどで、「洋服楽しい!」という観点からすると大いに歓迎なのですが。
足踏みする季節
夏の始まりの少し前
皆様如何お過ごしでしょうか。
気温の高い低いもさることながら、なんだかここのところ、雨降りが多いような気がしているのは僕だけでしょうか。
自身が雨男(あめお)であるという自覚は、これまでの人生を振り返っても、全く持ち合わせてこなかったのですが、何かしらイベントごとや用事があったりすると、けっこうな確率で雨天、ということが続いています。
今年に入って既に確か3回?くらい打ち合わせで伺っているレザーアルチザンのファクトリーにお邪魔する日もいつも雨。なんなら土砂降り気味。だったり。
北千住方面でのとても大切なイベントの日もわりとしっかり雨。だったり。
2020年1月、パリで見た現地の人達の
「雨が降ってきたら至極当然フードを被って凌ぐ」
という極めてナチュラルな所作に、衣服との距離感、付き合い方と言うべきだろうか、兎に角ハッと気付かされることがあって、それ以降
「この感覚を自身の立ち居振る舞いに反映させよう」
なんて思っていたりするのですが、如何せん、そもそもこの時期ですので、必ずしもフードが付いたコートを着ているとは限らず、寧ろそんなことはほぼ無く、まぁまぁ軽装、そうなると傘をさすわけですけど、まぁちょっと面倒くさいですよね。
シンプルに片手が塞がれますし、電車に乗るにしても出勤途中にコーヒーを買うにしても、傘を持っている、というのはなんとも煩わしいものです。
ですが、反面あることに気付く。
「なんか肌の調子が良い気がする。」
ネガティブ方面から雨天と言う事象を捉えれば、前述のように面倒が増えるなど様々マイナスに感じてしまいそうなことが数多思い付くわけですが、一転ポジティブシンキングの視座に立つとどうでしょう。
「肌が保湿されていつもよりカサカサしない」
という現象をはじめ、
「紫外線が少ないから日焼けしないで済む!」とか、
「野に咲く草花も喜んでいるであろう!」とか、
「今年の夏は地球規模で水不足が問題にならないかも!」とか、
普段は特に気にもしないようなあれこれ、何気なくそこにある街路樹の緑色の美しさに心洗われたり、マクロの視点で環境問題を考えてみたり、そんなきっかけを与えてくれたりする、ということも必ずしも無くはない。
要するになんでもそうですが、
「どのような視点で物事と向き合うか」
これは極めて大切なことだと改めて思います。
本当になんでもそう。
猛烈に何かを注視している時、熱中の最中にいる時って、感覚が研ぎ澄まされるが故にフォーカスが急激に狭まってしまったりするもので、そうなってしまうとあらゆる事象を一方方向からしか判断できなくなってしまいがち。
新しい刺激的な何かに出会って、これまで自分が大切にしてきたものが急に無価値に思えてしまったり、、なんていうことも往々にしてあることだと思います。
それが正しい判断なのであればそれはそれで良いのですが、
「猛烈な熱量」
に突き動かされて、ある種一時の熱病みたいな心理状態が、その判断の背中を押している大きな要因であるとするならば、それは良いこととは言い難い、というより勿体無いことと思います。
「時代が変われば価値観も変わる」
とはよく言いますが、僕はこれについては半分賛成半分反対、という立場を取っていて、表現としては
「時代の変遷とともに価値観は拡張するもの」
だと僕は考えるようにしています。
勿論、価値観って時流と密接な関係性の上に成り立つ感覚なので、その多くは流れゆくもの、で間違いはないと思う。
だけど、狂騒から一歩退いて、それこそ視点を少し変えてそのものの価値を改めて捉えてみると
「自分が夢中になった何かが実は無価値なものだった」
なんてことは基本的にあり得ないと思う。
やっぱりね、小学校低学年の時に聴いたZARDは今でも好きだし、その後に夢中になったHR/HMも今でも好き。
けど2025年5月現在、特に好んで日常的に聴いているのはエレクトロとかテクノが主だったりする。
自分が熱狂した何か、その価値の尊さは、それもそれで、間違いのない一つの事実。
特に自分が音楽活動に邁進していた頃は、それこそフォーカスがグッと狭くなっていて、生演奏以外には聴く耳を持たなかったし
「ディストーションギターこそ音楽の至高」
と心から思っていました。
だけど、音楽活動を基軸とする生き方から一旦距離を置いてみると、自作のプレイリストがZARD〜DEATH METAL〜HIP HOP〜TECHNO、、とカオスな様相を呈していく。笑
これをして
「価値観の拡張」
と言いたい。
生きてきたあらゆる局面、その時々で自分の感性の何処かしらに触れて、どのような形であれ惹きつけられたような事象は、それがどんなものであれ
「(少なくとも)自分にとって何かしらの価値」
を内包したものであることは間違いなく、そして必ずしも、その「価値」は時代の変遷に左右されるだけのものではない筈。
特にファッションなんてことを長い時間やっていると、この「価値観の変遷」の螺旋の外に身を置くことは極めて難しいのも事実で、多かれ少なかれ影響は受けるのですが、そんな時にですね、
「0か100か」ではなく、「好きなものが増えていく」という感性を携えて、高台から下界を見下ろすような心持ちで、「自分にとって価値のある何か」を大切に拾い上げて生きていけたら良いなと思っています。
そんな感じ。
今回はさらっと本題に行こうか、などと密かに思って書き始めましたが、まぁまぁつらつらと少々長くなってしまいました。
ここから重要事項となります。
タイトルにある通り、AW25シーズンより新たに立ち上がる新しい取り組み
【p|p】についてです。
読みはそのまま「ピーピー」、主にはレザーブーツ/シューズを展開するプロジェクトになります。
神戸のレザーアルチザン「Portaille」(ポルタユ)さんとprasthanaの協業という形で不定期で作品を発表していく、という取り組みの第一弾リリース、その御披露目兼受注会を開催する運びとなりました。
今年の一月に店舗を臨時休業にして弾丸日帰り神戸出張を決行したのですが、その案件が正にこの打ち合わせでした。
この時はあれですね、反省点でもあるのですが、マクロの視点で、とか前段で散々書いておきながら、僕自身のフォーカスは極狭、笑
「素晴らしい創作が出来るかもしれない」
という意欲に突き動かされるように、突撃アトリエ訪問と相成りまして、職人でありデザイナーの大渕さん御夫妻にはお手間をおかけしてしまいましたが、prasthana AW25のタイミングにしっかり合わせて頂き、この度の発表に至ります。
Portailleさんについて少々書かせて頂くと、その創作のほぼ全てをご自身の手仕事で、且つ自社アトリエで完結させる真の意味でのアルチザンブランド。
職人としての技術力の高さに加え、元々タンナーでのお仕事をされていたという経験があるそうで、レザーに関する豊富な知見もお持ちの方。
件の弾丸神戸出張時は、新たなインプットが過多状態になり、完全に脳内のキャパオーバー笑 帰りの新幹線で爆睡する、というところまでセットでした。
この状態は極稀に、特に作り手、職人とのセッションによって発生しがちで、大きく括ると「創作」という共通のゾーニングができるのかもしれませんが、僕が普段から行っている所謂デザイン活動とは異なるベクトルの「創作」そして「感覚」がもたらすインプット過多ですね。
p|pは、世に溢れる一過性の、注目を集めるための手段としての「コラボレーション」とは一線を画したもの、真の意味で「CRAFTSMANSHIPとDESIGN」が融合した作品、として打ち出したかったプロジェクトです。
prasthanaは2015年の設立より今年で10年、培ってきた物作りの線上にありながらまったく新しい表現として、このタイミングでこのような取り組みを形にできたことは、本当に有難いし、感慨もひとしお、です。
さぁそんなp|p。
1st LAUNCH PRODUCT 受注会概要は下記の通りです。
p|p preview event
NO.:PP-001
PRODUCT:OVERLOCK SIDE ZIP BOOTS_MARYAM HORSE FRONT
SIZE:37-44 (ハーフサイズ刻み)
PRICE:¥154000_(TAX INC)
DELIVERY:2025.9
DATE:2025.5.23(FRI)-5.25(SUN)
VENUE:prasthana sendagaya store
TIME:13:00-18:00
※時間外のご希望に関してはできる限り対応致しますのでお問い合わせ下さい。
まぁ、、佇まいからしてヤバめと思います笑
詳細は実際に店頭にて、ガッツリお伝えさせて頂きたいので、ここではさらっとアウトラインのみ触れます。
まず素材は、イタリア「MARYAM」社製のホースフロント。
レザーお好きな方だとご存知だと思いますが、MARYAM社はGUIDI社で研鑽を積んだ職人が独立して立ち上げた新進気鋭のタンナーです。
修行元であるGUIDI同様、フルベジタブルタンニン鞣し&バケッタ製法による高級馬革をメインとしていますが、他のタンナーとの大きな違い=MARYAMたらしめる要素は、独自のシェービング技術にあるとされています。
この技術によって、一般的な馬革の厚みの常識を覆すような肉厚感を保持したMARYAMのホース革は、それだけで抜群の存在感を放ちつつ、革の厚み故に生み出される「大きなドレープ-力強い履きジワ」が最大の特徴。
非常に印象的な足元を創出します。
デザイン的にはフロントセンターの剥ぎ部分にオーバーロックステッチを施し、物作りにおける便宜上の切り替えとは異なる、「意味のある線」を表現しました。
そしてソールですね。
採用したのはVibram#995C_ALEXANDERという品番。
本格的なトレッキングにも適応する機能を有したこのソール、特筆すべきはその極めて独創的な形状。
これは正に
「form follows function=形態は機能に従う」
サリヴァンも恐らくびっくりするであろう、形態と機能の超高次元での邂逅。
prasthanaがフィロソフィーとしている
「form,function&idea=形態-機能-発想」
表現としてこれより適したものがあるのか、! いやない、!
と言った状態です。
めちゃめちゃ端折りますが、そんなPP-001。
どうでしょう、prasthanaを見てくれている方々には響くのではないかな、と思います。
現状、かなりのお問い合わせも頂いているので、皆様是非店頭にて体感頂けると嬉しいです。
遠方の方はメールなりお電話なり、ご都合の良い手段でお問い合わせ頂けましたら、可能な限りご対応させて頂きます。
p|p第一弾リリース。
是非見届けて下さい。
宜しくお願い致します。