無常をいく旅人たれ。p|p PP-003 IMPERMANENCE RIDERについて。

prasthana co., ltd. 代表/ デザイナーの武井です。

いやー、、年末。
書き出しとしては大方の予想通り(?)
怒涛の師走、Year Endのことになっちゃいます。
2025年も皆様大変お世話になりました。
prasthana sendagaya storeは年内、12/30(火)まで営業しようかな、と思っていますので、 僕はまだ仕事納めしていない状況ではありますが、何にしても2025年も最終盤。
昨年も最終の記事でまるで同じ文言を書いた気がしますが、今年も無事年を越すことができそうです。

近況諸々、このJOURNALをはじめ最近はXでも個人の発信をパラパラとしていまして、追いかけてくれている方がどれほどいらっしゃるかは定かではないですが、自身ないしprasthanaを取り巻く環境の変化とか、トピックがあればそれらはわりと詳らかにしてきましたので、ご認識頂いているケースもひょっとするとあるかもですが、まぁ、多分に漏れず色々ありました今年も。
色々あった、なんてデフォルトと言えばそうなのですが、それにしても色々あったな、としみじみ。

かねてより着手しなければ、と考えていたものの、忙しさにかまけて後手後手となってしまっていた生産背景ならび態勢のブラッシュアップ、がまずは大きな改革でした。
以前書いた記事と重複する部分もありますが、やはりですね、活動歴もそこそこ長くなってくると、改善の余地があると分かっているポイントに関しても、なんとなくの推進力でなんとなくこなせてしまうもので、そうすると、どうしても優先順位が低くなってしまう、日々に追われ、「また来季考えよう、、!」みたいな状態に陥りがち。

そんな悪循環で、長い間後回しにしていた、否目を背けて放置していた施策にしっかりと着手できたのも今年の話。
それに伴い、当たり前ですが新たな展望が開けたというポジティブな部分と、相応に負担も嵩み、下半期特にかな、心身ともになかなかハードな時間を過ごしていました。
この辺りの成果が目に見える形で結実するのはもう少し先のことになりますが、兎に角より良い状態を形成していけることと思っています。

あとは個人的な話ですが、11月末にとある機会を得まして、あまり深く言及することはしませんが、なんというか、今更ながら人としての佇まいをちゃんとしないと、と背筋を伸ばした次第。
先述した生産背景の話のように、直接prasthanaの運営に関わることではなくとも、自分がインスピレーションを受ける様々なことをしっかりと咀嚼し、形を変えて表現に反映させる、そんな往還のプロセスを丁寧に紡いでいきたいと、師走のこの何とも言えぬ、年にこの時だけの独特な空気感を纏った時間の中にいて、そんなことを考えています。

で、年末年始と言えば、ですよ。

レザープロダクトであったり特殊な素材を用いたものであったり、内容はそのタイミングによって様々ですが、ここ数年、prasthanaの展示会における展開とは別軸で、期中に特別なプロダクトの提案を続けてきました。
2025年内最終の更新となる今回はその話をさせて頂きます。

2025-2026の期中企画は、p|pの第三弾を発表致します。

p|pがスタートしたのも今年のこと。
概要なんかは過去に書いていますが、軽く説明すると、神戸を拠点とするアルチザンシューメーカー「Portaille」との協業ブランド。
prasthanaのpとPortailleのpで「p|p」読みは「ピーピー」です。
卓越した職人技術をベースに、prasthanaとして創作を続けてきた、その短くない時間の中で培ってきたデザイン哲学を融合することで「新しい価値」の創造を目指すプロジェクト。
まだ一年足らずなのですがね、相当濃密な活動ができていると思います。

今年3月に行ったprasthana aw25展示会のタイミングで第一弾モデルを発表。
その後9月のss26展示会時に第二弾、でした。
このなんとなく出来上がったように感じられていたリズムを自ら打ち砕く(?)かの如く、このタイミングで第三弾の発表となります。
prasthanaともPortailleとも言わず、p|pと独自の名を冠していることからも伝わるかと思いますが、年に2回、展示会のタイミングに合わせて新作を発表、という座組みではそもそもなく、p|pはp|pとして、独立したひとつとして機能させたいと考えています。
過去二作は、便宜上展示会時期に合致した、ってだけってことです。
そんなこんなでいざ第三弾。

アウトプットとして、久し振りに映像も制作しました。
かなり簡潔な内容となっていますが、画の感じ、音の感じ等々、打ち出したかった世界観は表現できていると思います。
是非⇩よりチェックしてみて下さい。

prasthana sendagaya storeでは、オープンの時点からGUIDIをセレクトしていますし、靴は僕自身長らくめっちゃ好き。
そんな興味の対象に、ここへきてセレクトではなく、デザインという新たな付き合い方ができるようになったことは本当に有り難く、そして何よりめっちゃ楽しい。
第一弾PP-001、第二弾PP-002ともにテンションの高い提案ができたことと、ポジティブな反応を返してくれる方の多さに、既に達成感すら感じていたところもあったのですが、今回の第三弾、PP-003はきっと更に驚いてもらえるのではないかと思っていますし、p|pとして創造する価値のレベルを一段階押し上げるような、そんな作品が完成したと確信しています。

p、P、ピー、、がそろそろゲシュタルト崩壊を起こしそうなので、ひとまず、オフィシャルのリリースをご覧下さい。

 

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p|p

PP-003 IMPERMANENCE RIDER
UNEVEN SKIVING CORDOVAN/SILVER925

 prasthanaPortailleによる協業レーベル「p|p」第三弾リリース。
吊り込み、仕上げの加工まで全て人の手によって創られる作品は、真の意味での「ARTISANAL」を体現するもの。

その純然たる職人仕事にprasthanaの創作活動を通じて培ってきたデザイン哲学を融合することで、新しい価値創造を目指すプロジェクト。

 第三弾モデルとなる本作のアウトラインは、バックジップ仕様のバックルブーツ。

 選定した素材は特別なコードバン
「UNEVEN SKIVING CORDOVAN」


コードバンの第一層をリン酸鞣し、染色の際に固形のワックスとオイルを時間をかけて少しずつ浸透させ、ずっしりとした粘りのある質感を創出。
熱を加えることで革が引き締まり、高密な状態を生み、それが特有のうねりと艶として現れる。
繊維質の変化が見せる不均一なグラデーションは、他の素材では代替不可能な極めて異質なもの。
歴史ある姫路のタンナーが、持てる技術と知見を総動員して創り上げる、
文字通り特別なコードバン。

 レザーブーツ作成における重要な工程であるヒールスタックは、積み上げたレザープレートを釘打ちして仕上げる伝統的な職人技術である。
この箇所において採用した
「DISSONANT OFFSET LAYERS」


整然と積み上げられたヒールスタックの表現とは異なる方法論、意図的に構造線をずらすことで断層を生み出す。
それが心地良い違和感/美しい不調和として昇華している理由は、卓越した技術はもとより、手の痕跡を感じられることで人が受ける感慨に依拠する。
黒く染色した後、ロウ含浸で不均一な光沢を付加、更に高温ブラスト処理を施すことで
微細な繊維が表面に立ち上がり、天然素材ならではと言える表情を見せる。

 モチーフとしたライダースブーツ/エンジニアブーツを象徴するディテールであるバックルパーツは、アルチザンジュエリーブランド「iolom」に特注して作成した
「HAMMERED FINISH SILVER925 BUCKLE」


素材にシルバー925を用い、職人の手によるハンマーワーク=槌目加工を施した楕円の
パーツは、極めてナローな線径でありながら、無数に存在する「面」が光を拾い、
どの角度から捉えても異なる豊かな表情を創出する。
「無骨=強さ」と「繊細=美しさ」
二者の距離を埋める重要な要素として、このバックルは存在している。

 作品名とした「IMPERMANENCE」は直訳すると、「無常=万物は常に移ろいゆく」
という意味を持っており、極めて無二性の高い素材と手仕事による創造、代替のきかない個の強さや、時間経過とともに育まれる変化、それらを包括した表現として用いた。

 企画に臨む前段階から明確に「至高の創造」を強く意識して取り組んだ本作。
現段階において持ち得る全ての知見や技術、デザイン哲学を遺憾無く注ぎ込んで作り上げた。

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概要は上記のリリースが雄弁に語ってくれたかと思います。
重複しますが、今作PP-003の企画に臨む自身に課したスローガンとして、現段階における「至高の創造」を目指しました。
兎に角、今出来得る最高の表現の追求、それを一切の妥協なく遂行すること。
エンジニアブーツという極めてクラシックなデザインをモチーフとしましたが、細部のディテールや仕様諸々、本当に長い時間をかけてじっくりと思考を重ね、至高に辿り着くべくあーでもないこーでもないと試行を繰り返す日々は9月初旬から始まり、2025下半期の僕の脳内をジャックしていたことは言うまでもないです。

僕の中で確たるイメージとして「IMPERMANENCE RIDER」というネーミングがあって、意訳すると「無常をいく旅人」というそれは、「旅人=RIDER」と変換され、ということはバックルブーツでしょ、って流れでモチーフを選定、これが良くも悪くもこの企画の難しさを跳ね上げた。笑

服作り靴作りに限らず、オーセンティックなモチーフから着想してデザインを展開しようとする場合、端的に言うと説得力が増す、というメリットを享受することができる、と思う。
それは、長い時間をかけて醸成されてきた文化的背景とかそれに纏わる文脈、そのような諸要素が製品の佇まいを分厚くするのに一役買う、ということ。
PP-003にはこの要素が必要でした。
しのごの言わず正統的にカッコ良い、圧倒的なボトムの安定感というか、そんなような理屈ではない「本物の空気」を纏わせたかった。

メリットだけだったら良いんですけどね、同じようにデメリットも存在する。
それが、モチーフとして完成されているが故に、デザインをする、手を加えるべき箇所が極めて少ない、ということですね。
弄くり回しても正統感は薄れていくから良いことない、だけどやらなければやらないで、「みんなご存知のこれです」という着地にしかならない。
このバランスを取る作業、デザインの足し引きといった塩梅が、正直めちゃ難しかったです。

服のデザインはやっとのことで、このようなコツ、というかなんというか、ツボ(?)みたいなものは、朧げながら掴めてきたと思えているのですが、靴に関しては言っても今年デビューの新人なわけですから、そりゃ難しくて当然です。
微修正、微調整要望の嵐に嫌な顔ひとつせず付き合ってくれたPortaille大渕さんには最大限のリスペクトを!
この場を借りて御礼申し上げたい。

あとは、毎度お世話になりっ放しのiolom坂本さん。
思えば知り合って随分長くなりましたが、ここへきて僕自身の表現と坂本さんから生み出される金具の取り合わせが、我がことながら非常に良い関係性として、作品の中で結実しているように感じています。
線径は極めてナローではありますが、「Little Parts Big Difference」とは正にこのこと。
無骨と繊細を行き来する「IMPERMANENCE RIDER」は、この要素がなければ、間違いなく完成しませんでした。
iolom坂本さんにも最大限のリスペクト!
この場を借りて御礼申し上げたい。

そんなところでしょうか。
長々と綴りましたが、シンプルな話、最高の一足が完成しました。
デザイン、品質は勿論、伴って価格も過去最高となってしまいましたが。。
ですがこれに関しては致し方ない。
概要に目を通して頂くだけでも濃度は伝わる筈だし、そもそも価格を下げることができる要素が全くない、と言い切ってしまえる、そんな物作りです。
安いわけないです。
その分最高に良い筈です。

2026年始より、prasthana sendagaya storeならびに極少数店舗ではありますが、お取引先様店頭にてPRE ORDERイベント開催となります。

大晦日から年始にかけて
まずは毎度僕の渾身の企画に真っ向から応えて下さる、Amanojak.北千住店にて〜1/10(土)の期間(小山さん宜しくお願い致します!)

1/11(日)〜1/18(日)は我がprasthana sendagaya storeにて開催

そしてその後、
1/23(金)〜鳥取県米子市のサイコボックス(都田さん宜しくお願い致します!)

1/31(土)〜石川県金沢市のALTRA(橘さん宜しくお願い致します!)

上記のスケジュールで進行致します。

ここ最近は特に、毎企画自身に課したやるべき仕事を全うしているという自負はあるので、オオカミ少年のようになってしまうかもですが、まぁ、今作はマジで自画自賛が止まらない、本当に良い作品ができたと思っています。

去り行く2025年を締め括る、そして来たる2026年に視線を向ける。
その時間の狭間に置かれる創造。

あなたの感性の何処かと共鳴することが出来たのであれば、是非手に取って頂きたいと思っています。

そんな感じで。

残る余白を埋めに、年明け変わらず皆様と店頭でお会いできることを楽しみにしております。

それでは、良いお年をお迎え下さい。

宜しくお願い致します。