いかつい背骨を手に入れたい。【p|p】PP-002 previewについて。
prasthana co., ltd. 代表/デザイナーの武井です。
ちょっと今回はですね、いつものように落ち着いて長々とあれやこれやと、書いている時間もないのでサクッといきます。
いつもの「秋ですね、、」的な雑談は自粛。
要点だけズバッと、否サクッといってみようと思います。
今週末から来週頭にかけて
11/7(金)-11/10(月)の日程で、p|p第二弾リリースとなる
PP-002 BALMORAL BACK ZIP_茶芯HORSE/STACKED METAL HEEL
preview イベントを prasthana sendagaya store 店頭で開催致します。

p|p 果たしてどのくらいの方々が認識してくれているのだろうか、ちょっと未知数ですので軽くご説明から。
神戸を拠点とするアルチザンシューメイカー「Portaille」さんとprasthanaによる協業プロジェクト、双方の頭文字を取って「p|p」読みはそのまま「ピーピー」です。
どのくらいの方が認識してくれているのか未知数、と書きましたが、これは自虐でも謙遜でもなんでもなくそれもその筈、つい先日リリースしたPP-001がその第一弾、この秋冬に立ち上げたばかりのプロジェクトなのです。
p|pは基本、prasthanaのコレクションとは別物として取り組んでいるのですが、現段階では便宜上、prasthanaの展示会のタイミングに合わせる形で新作を発表しています。
なので、第一弾PP-001は今正にオンシーズンであるaw25展示会時、そして今回の主役PP-002は来シーズン、ss26展示会時にバイヤー様向けにお披露目しました。
ss26公式のルックを先んじて公開してからのここ2ヶ月ほどの間、断続的にお客様方からのお問い合わせを頂いていて、これはある意味直営として果たすべき責任でもあるなと、今回のpreviewイベント開催に至りました。
有難いことに、第一弾であるPP-001は大きな反響を頂きまして、お取扱店バイヤー様からのみならず、直接店頭でお会いしている顧客様方からも多数のオーダーを承りました。
「p|p」という新規プロジェクトを立ち上げ、スタートとしては理想的と言える状況をまずは作ることができたのですが、問題は次ですよ、第二弾どうなるの、って話。
アパレル領域に限らず、よく言う
「2作目が1作目を超えられない」説。
このテーマについては過去に書いた記憶がありますが、要因は様々考えられます。
消費者目線でいくと「新鮮味の減退」とか単純に「慣れ」とか、ですかね。
それは鮮明なデビューを果たしたルーキーは強いですよって話で、ちょっと角度が違うかもだけど、ビギナーズラックと言う言葉もあるくらい、立ち上げのタイミングって、思いの外上手くことが運ぶ、ということは往々にして起こり得ると思います。
だけどその次、上手くいった1の後の2、これの成果を出すことが極めて難しい。
1stが名盤で、続く2nd作成時にプレッシャーから精神を病んでしまって、内容がグズグズになってしまう、とか、そんなアーティストってめっちゃ多いです。
こんなことは、もうそこそこ長いこと事業やってきていますし、なんならそれ以前の人生においても嫌っていうほど味わってきました。
大変有難い悩みではありましたが、PP-001の後の二作目、PP-002の創作に臨む自身のメンタリティは、そんな状態に似たものでした。
一応注釈で、この「上手くいったPP-001」という表現は、単純にセールスのこと、だけではないです。
経営なのでその要素は勿論大切ですが、それを超えて
「創るべきもの」
「ブランドとして表現するべきもの」
を最良の形でアウトプットすることができた、そしてその評価として有難いことにセールスもついてきた、そんな諸々を包括した表現として捉えて下さい。
そのような事情もあり、兎に角かなりの覚悟を持って取り組んだp|p第二弾。
相応の労力や時間、気力体力を費やして完成させました。
以下、業務用の内容にはなりますが、公式のリリースを添付します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
p|p 2nd LAUNCH PRODUCT
PP-002 BALMORAL BACK ZIP_茶芯HORSE/STACKED METAL HEEL
神戸を拠点とするアルチザンシューメイカー「Portaille」との協業レーベルである「p|p」(ピーピー)第二弾ローンチとなるレースアップブーツ。
裁断、縫製、吊り込み、仕上げの加工まで全て職人/デザイナーの手によって創られる作品は、真の意味での「ARTISANAL」を体現しており、更に日本人ならではとも言える繊細な感性を融合することで、至高のプロダクトとしてのクオリティを遺憾無く発揮しています。
第二弾リリースとなる今作は、バルモラル(内羽根)仕様のバックジップ付属のレースアップ型ブーツです。
素材には、皮革産業の世界的産地である姫路のタンナーが生産する、茶芯馬革を採用。
茶芯ならではと言える鈍い光沢感と、きめ細かく上質で、尚且つ柔らかな質感を併せ持ったマテリアル。
そのような超上質なレザーに、Portailleが誇る日本人の足型にこの上なくフィットする靴作りの技術が融合することで完成した、スペシャルな一足です。
デザイン的なハイライトは、ヒールに配したメタルプレート。
砂型鋳造(サンドキャスト)の技法を用いたこのパーツは、原型からオリジナルで作成し、細かな修正を密に行い、作り上げました。
着想源は、モード/アルチザン文脈の中の極一部、ですが確実に脈々と継がれてきたメタルヒールによる靴創造です。
それをp|pが持つ美的感覚を注入して再解釈、私達が出した答えは、ブーツを作成するプロセス中の、レザープレートを積み上げる工程において、その一部をメタルにて置き換えるという方法論でした。
意匠として間違いなく強い表現になっているかと思いますが、突拍子もないもの、素っ頓狂なものに陥っていないのは、そのような文脈/歴史の上に成立したデザインである、ということが最重要要素であると考えています。
靴作りの製法はBLACK RAPIDを採用しました。
マッケイ製法の軽快な履き心地とトゥの反りの良さ、グッドイヤーウェルト製法の耐久性を兼ね備えたBLACK RAPID製法は、美しさと堅牢性を同時に満たす技術で、オールソール交換にも対応、長く育てていくブーツに不可欠な要素を充足します。
付属には、バックジップにYKK EXCELLAファスナー、フロントのレースにはシルク/レーヨン混紡による江戸打ち組紐をそれぞれ採用、細部に至るまで妥協のない選択をしています。
両サイドにドイツの芸術家、WASSILY KANDINSKYの作品「COMPOSITION」からインスピレーションを得た切り替え線をデザインとして配し、ミニマルなアッパーデザインに「idea=アート性」を付加しました。
職人の技術依存ではなく、p|pとしての創作の在り方、美的感覚の所在を明確に表現することを何よりも重視し作成した今作は、世に溢れる大量生産品とは一線を画す、真に価値のある創造を体現するピースとして、強い存在感を放ちます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リリースにもありますが、見所ありまくりの今作において、やはりこれでしょう、と言える要素が「砂型鋳造」ですね。
「サンドキャスト」なんて呼称もありますが、その名の通り、砂で作成した型に溶かした金属を流し込み、冷やし固めて製品を作る鋳造方法。
今年の夏は兎に角このことばかり考えて過ごしていました笑


砂で作るわけなので、当然ですけど鋳造後、その型は都度崩れ落ちる。
余りにも大量生産に向かない性格を持った技術故、10年ないし20年後には、担い手不足など様々な事情から、「失われてしまう産業=ロストテクノロジー」となってしまうかもしれない、否その可能性が高い、と言われているような鋳造方法です。
そんな現状は、ドライに言ってしまえば至極当然のこと。
他にも色々な手段がありますし、3Dプリンターとかも急速に一般的なものになってきていますから、こと量産、そして高精度という部分のみにフォーカスするのであれば、まず選択しない方法だと思います。
かく言う僕も、「アナログ回帰」と言いますか、「他の何物よりも手仕事のみが至高」なんなら「非合理にこそ美が宿る」というような考え方とは距離を取っている立場です。
では、この極めて非効率的な方法を何故今回採用しているのかと。
答えはシンプルで、他の鋳造方法には無い「手仕事の痕跡」とでも言うべき独自の質感が製品に宿るから、なんです。
具体的には砂の目です。
微細なざらつきが残るその表情は、制作過程を知らない状態で見ても、恐らく誰しもが「砂」と「人の手」を感じ取ることができるものと思います。
それだけ豊かで、そして個体差のある製品が出来上がる。
正に「同じものは二つとして存在しない」そんな技術なんですね。
こんなことを知っちゃったら、それはもう夢中ですよ。
更に前述した通り、需要が無ければその技術は失われていきます。
p|pの依頼だけでどうこうなる話ではないし、砂型鋳造の文化を支えたい!! なんていう大それたことを表立って言うつもりも全くもってないけれど、それでも本心、心根はそのような場所に所在しています。
誰と仕事をするのか、そしてどのような手段を用いて掲げた目的を達成するのか。
そういった選択の連続がブランド運営というものです。
誰に頼まれるでもない、制約もない、そんな環境で自ら取捨選択し進めていくこと、そのプロセスこそがブランドのアティチュードとなり、太い背骨となる筈。
今回の取り組みを経て、prasthanaならびにp|pは、もうちょっと屈強な体幹を得られるのではないかと思います。
イベント概要は下記に記します。
▪️会期:2025年11月7日(金)-10日(月)
▪️会場:prasthana sendagaya store
▪️価格:¥181500(税込) ※全額前払いもしくはデポジットをお預かりしてのご予約受付
▪️納期:2026年3月
▪️サイズ:40/41/42/43 ※ハーフサイズもご対応可能
営業時間は全日程13:00-18:00
ご都合つかない場合は、ご連絡を頂ければ個別にご対応致します。
近々でのご案内となってしまいましたが、お時間見つけて是非足を運んでみて下さい。
「生活と芸術の統合」価値のあるものとして、自信を持ってご提案致しますので。
宜しくお願い致します。
