inside of thought.#2 [prasthanaのこと_2]
prasthana co., ltd. 代表/デザイナーの武井です。
長らくの間、このNEWSのコンテンツでは、例えば新規入荷商品のご紹介だったり、或いは企画展などのお知らせだったり、基本 prasthana sendagaya store の営業に纏わるテーマに沿って記事を書いてきました。
そして、その題材の縛り(と僕自身の怠惰)もあって基本超不定期更新、(というか超低更新頻度)でゆるりとやってきていました。
ですが、折角このようなコンテンツがあるのであればもうちょっと真面目に取り組んでも良いのではと、ちょっと一念発起して(大袈裟)、前回から新たにテーマの幅をぐっと広げて様々な事について僕なりの意見やら想いやらを書いてみよう、という試みを始めました。
題して inside of thought.(思考の内側)、今回は#2になります。
題材としては前回の内容の延長線上、僕が手がけるブランド prasthana に関して、もう少し掘り下げてみようと思います。
前回の記事、inside of thought.#1を未読の方は、是非先に#1を既読にして頂き、今回の記事に進んで頂けると有難いです。
さて#2のテーマは、近年の prasthana のラインナップの中で断続的に発表している「LC」というワードを用いたプロダクトについて。
まずネーミングですが、ブランドコンセプトとして掲げているワードの中に「logically constructs=論理的構築」という一節がありまして、この頭文字を取って「LC」としています。
定義としては、「シーズンの限りではないエッセンシャルなデザイン」に付ける名称。
prasthana を運営していくにあたって、将来的にも継続して採用していくアイコニックな意匠、言い方を変えると、引き出しにしまっておいて適宜取り出すアイデア、という感じ、伝わりますかね?
なので、基本的にその衣服全体を指すわけではなく、ディテールを表す言葉、という理解をして頂けると良いかと思います。
初出は、去るAW22シーズンを象徴するプロダクトとなった Ermenegildo Zegna のファブリックを使用して作成したセットアップ、これに用いた、袖が開閉する意匠を「LC1」と表現し、その後現在AW23の時点で「LC2」、「LC3」とラインナップを増やしてきました。
で、これにはちょっとした面白というか僕なりのリスペクトを込めた言葉遊びを忍ばせておりまして、それについて少し。
モダニズム建築の巨匠、または近代建築の三大巨匠と称される建築家、Le Corbusier (ル・コルビジェ)。
超高名な人物なのでご存知の方も多いかと思いますが、氏の手がけた歴史的名作と言われる家具にも、「LC」の名を冠した作品がいくつもあります。
この「LC」は言わずもがな、Le Corbusier の「LC」で、特に通称「グランコンフォール」=「LC2」が広く知られていますね。
字面でピンと来ない方も画像検索して頂ければ、「見た事ある!!」となるはずです。
コルビジェの「LC」も、「LC1」、「LC2」、「LC3」、、、と多くの作品が存在しますが、そこにフォーカスしてリスペクトを込めたオマージュ、という裏ミーニングが prasthana の「LC」というネーミングに隠れています。
コルビジェの作品の中でも僕が特に惹かれる「LC1=スリングチェア」、「LC10=チューブテーブル」は、prasthana sendagaya store で什器として使用していますので、買い物がてらそんな要素も是非チェックしてみて下さい。
話を戻します。
prasthana の「LC」には、それぞれのナンバリング毎に意匠を表す言葉が付随します。
LC1=開放(Release)、LC2=拡張(Expansion)、LC3=重ねる/被せる(Overlay)、といった具合。
基本的に人の手による創造物には、全て制作の意図が何らかあるものと思いますが、こと prasthanaの「LC」と銘打ったプロダクト群はその意図がより明確、と言いますか。
なので、端的に表現できる言葉があり、そしてその言葉(意図)と併せて衣服に触れてもらうと、より面白みも深まる筈です。
細部の話をする機会って、思いの外少ないものです。
展示会場だったり勿論店頭でも、諸々しっかりお伝えできるように努めてはいますが、言ってしまうと大事なのは実際着てみて良いかどうか、という至極単純な着地点な訳で、つらつらと製作者の意図を語る事が正しくない場合も往々にしてあります。
となるとですね、こういったコンテンツを用いて発信する、その意義も見出し易くなるのかなと思います。
#2もお付き合い頂きありがとうございました。
これは分野を限定した話ではないですが、世の様々な事象には必ずそのバックボーンとなるカルチャーだったり知恵だったりが存在します。
そういった様々を掘り下げ自分なりに吸収して、その深みや面白さにズブズブとハマっていき、気付けばいまだに洋服に夢中ですが、そのくらい良いものだし価値がありますよやっぱり。
気温も随分下がってきて秋の気配どころか完全に秋が到来しています。
AW存分に楽しみましょう。
宜しくお願い致します。