BAUHAUS CAP【JAPAN CALF/SILVER925 EDIT.】ORDER MEETING #5

prasthana co., ltd. 代表/デザイナーの武井です。

一気に年末。
12月も中盤過ぎた辺りから怒涛の如く年の瀬の空気が押し寄せてきました。
体感的にはつい最近12月に入って、「やばいもうあと1ヶ月で2023年終わる。」とか思っていた筈が、、時間の進度が相変わらず凄まじいです。

2023年も皆様大変お世話になりました。
prasthana sendagaya store年内の営業は12/29(金)にて終了、今年もなんとか無事年を越せます、が、例年以上に色々ありました2023。
ディテールを細かくお伝えする必要はないかと思いますので、諸々は端折りますが、まぁ良きにつけ悪しきにつけ、様々勉強させてもらいました。
今年後半から、当コンテンツの名称を「JOURNAL」と改め、題材の選定を少し広げて文章を書いてみる、という試みを実行に移し数ヶ月、有難い事に様々な角度から反響を頂けるようになってきました。
これについては思った通りと言いますか、
prasthana然りprasthana sendagaya storeでセレクトしている商品然り、ここに興味を持って下さるお客様って、相当感度が高い方々だと思うんです。
衣服に限らずカルチャーに深く傾倒すればする程、それをより深く掘り下げたいという欲求が生まれるのは当然のことで、そもそもそういったアンテナを持った方に対してアプローチしているという性質上、このようなちょっとした読み物コンテンツって需要があるのではないか、そういった仮説からスタートしてますので、有難いことに予想が当たった格好、という訳です。
兎に角、お読み頂いている方々の存在はとても励みになっております。
今後もより精度を上げて!!継続していきますので何卒宜しくお願い致します。

さてそんな感じで、2023年最後の記事となります。
今回は年始から開催する特別な企画に関して紹介させて下さい。
2022年始からスタートした受注イベントで、年2回のペースでやってきましたので、今回はその5回目となります。
毎回熱量迸る感じで記事を書いてきましたので、過去記事を遡って頂くのも有難いですが、馴染みのない方々に向けてと、今一度趣旨を明確に提示する為に、本企画の概要を書いてみようと思います。

インターネット及びSNSの急速な普及により、誰でも欲しい情報が容易に入手できるようになった現代において、その便利さと相反して「新しい発見」に触れた時の高揚感は絶対的に減退してしまったと感じます。
衣服に限らずあらゆる領域で情報が一人歩きし、受け手の需要容量を大きく超えてなお、供給され続けている。
発信と受信の相互関係性が崩れれば、当たり前ですがポジティブな成果に辿り着く筈もなく、溢れ返る情報は只々消費されていきます。
あらゆる文化的な創作物、衣服でもアートでも音楽でもなんでも良いですが、それに触れた時にその事物/事象の真価を理解するのって、受け手側のリテラシー、更にその人のスタンスや状況に委ねられる領域です。
例えば、見た目に美しい且つ技術的にも高度な創作物があったとして、「美しさ」の感覚は人それぞれ違う筈なので一概には言えないですが、取り敢えずここでは多くの人が「美しい」という価値を感じたとします。
ですが、「技術的に高度」という価値に関しては、その分野における見識が無いと、高度か否かの判断ってそもそもできません。
そして厄介な事に、様々な「文化的価値」を内包したものであればある程、それをインプットし、咀嚼して理解する為には、受け手の知識や感性はもとより、受信に対するポジティブな姿勢と、ある程度の時間も必要と僕は思います。
「ロゴがプリントされているか否か」とか「写真一枚で判断できるような装飾」といった、ある意味で解像度の高いデザイン、それはそれで良いとは思います。
良いとは思いますが、そのような表面的なアプローチに終始しない、言わば「価値のレイヤー」を正しく理解し、それによってもたらされるメリットを享受していくこと、そんな価値観を蔑ろにしてしまうと、長い時間をかけて醸成されてきた技術や文化といったものが衰退してしまいます。
今ある「当たり前」が、10年後には「ロストテクノロジー」となってしまう可能性は大いに有り得る訳です。
そんな状況に警鐘を鳴らす、と言ったら甚だ大袈裟ですが、SS/AWのインラインのコレクションとは別軸で企画する特別なプロダクトに限り、いつもとは少し視点をずらしてその事物にフォーカスを当てる事で輪郭をより強く際立たせる、という感覚で僕なりに取り組みを具現化したのが、この「ORDER MEETING」です。

詳細に関して
展開規模ですが、これはかなり限定的な場所/期間に絞ります。
この取り組みに毎回ご賛同頂いているprasthanaお取扱店の
東京:Amanojak.SENDAGI様と、prasthana sendagaya storeの2店舗で、2024年始の初売りから1月14日(日)までの期間、受注を承ります。
その後、生産はいつも通り、僕が絶対の信頼を寄せる国内屈指のレザーファクトリーにて。
製品として仕上がった後、一点一点僕がハンドフィニッシュの作業を行います。
納品タイミングは、工場の状況諸々や数量に左右されるところが多分にありますが、4月を目安に進めています。

プロダクトの概要は、まず端的に言うとレザーを用いて作成したCAPになります。
この受注会企画の#1が、2022年始でしたので今から2年前、今尚多くの方々にご愛用頂き、またお問い合わせも頂き続けている、GUIDI社のオイルドカーフを採用して作成した、通称「GUIDI CAP」でした。
その後、レザーウェアを3型作成し、今回#5でCAPに回帰します。
当たり前ですが、過去をなぞる気など毛頭ありませんので、前回の「GUIDI CAP」を凌駕する品質、更に特別な意味を宿したプロダクトに昇華しています。

オフィシャルのリリースは下記の通りです。

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■BAUHAUS CAP【JAPAN CALF/SILVER925 EDIT.】PRODUCT DETAILS.

北海道原産のカーフレザー「JAPAN CALF」ならびに、「SILVER925」で作成したオリジナルパーツを採用した6枚剥CAP。

厳選したカーフ原皮をベースにオイル+ワックスで仕上げた革は、1m/m厚設定特有のどっしりとした剛性とマットな光沢感を誇る、あたかもヴィンテージのような重厚な表情を持つ至高の素材である事が、一見して伝わる程の佇まいを有しています。

今回の企画は、そのような最高級の素材を用い、海外のトップメゾンの製品も数多く手掛ける国内屈指のレザーファクトリーに生産を依頼したCAPに、妥協無く作り上げた付属による意匠性を付加した、特別なプロダクトになります。

フロント、バック両方向からの表情を決定付けるバイザー、バックアジャスターには、それぞれ「SILVER925」で作成したオリジナルのパーツを配しています。
バイザーには、ストリートスタイルを象徴するアイコニックなモチーフの一つであるステッカーデザインをオマージュして作成したサークル型エンブレムを、製品後に手作業でリベット留めして取り付けています。
サークル型エンブレムには、デザイナー武井がかねてより影響を公言している「BAUHAUS」の校章をデザインとして採用、データをもとに忠実に原型を起こして鋳造し、燻加工を施した後、何段階にも渡る磨きの工程を経る事で、素材ならではと言える表情を創出しています。
「BAUHAUS」の講師でもあったアーティストである「オスカー・シュレンマー」がデザインしたこのエンブレムは、四角を構成する事によって人の横顔のようにも見える、優れたデザインであるとともに、ある種のキュートさやキャッチーさも併せ持っており、その歴史において広く認知されている「BAUHAUS」デザインを代表する非常にアイコニックなものです。
この度、日本バウハウス協会にご協力頂き、デッサウ・バウハウス財団ならびにワイマール・クラシック財団に当デザインの使用の正当性を確認の上、この企画が実現しました。

サイズ調整を可能とするバックアジャスターにも、「SILVER925」で作成したオリジナルのバックルパーツを配し、機能性と意匠性の高次元での融合を表現しました。
ベルトにはイタリアの名タンナー、「BADALASSI CARLO」社のPUEBROダブルショルダーを採用、パーツ面積としては小さいものの、妥協なく素材をチョイスする事で、このプロダクトの特別な存在感を下支えする重要な要素となっています。

裏地には甲斐絹の産地として有名な、富士山の麓、山梨県富士吉田市でしか生産されない最高級のキュプラ織物を採用しました。
他の地域では、気象、高度その他の条件が整わずに生産する事が不可能な事から、「奇跡の裏地」と評されるキュプラ生地は、艶かしい鈍い光沢を有し、着用感の良さは言うに及ばず、製品の佇まいに大きく影響を与えるような高級感も兼ね備えています。

全ての要素に一切の妥協をせず、培ってきた物作りのノウハウと様々な人の協力、そして何よりこの企画にかける熱意によって実現した、真の意味で特別なプロダクトです。

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そうなんです。
僕がその理念に強く共鳴し、かねてより影響を公言し続けている「BAUHAUS」
そのアイコニックなデザインを使用したスペシャルなCAPをローンチするという、正直「これ以上の座組みは考えられない!」というプロダクトとなっております。

リリースにもある通り、使用している素材は「JAPAN CALF」(北海道原産の厳選されたカーフ革)と、各部の付属は全て「SILVER925」製のオリジナルパーツになります。
素材に関する好みは言ってしまうと人それぞれなので、必ずしもこれが正解、って事はないのですが、少なくとも前作にあたる「GUIDI CAP」と比較しても、甲乙付け難いクオリティーである事は間違いなく僕が保証しますし、数字的な話をぶっちゃけてしまうと生産(素材)原価もそれを物語っています。

また、更なる理想の形を追求する為、長年の友人であるパタンナーに作成を依頼し、パターンを0から新たに構築しています。
具体的には、従来の6panel curved visorとの比較で被りを少し浅くし、それに伴い全体のバランスも調整しました。
過去最高の美麗なシルエット、そして極上のフィットを実現しました。

そして、このプロダクトの最も重要な要素である「BAUHAUS」のエンブレム、これはですね、、まぁ、我ながらよくやったな、と思います。笑
2023下半期はまさにこのことだけ考えて生きていた、と言って過言ではない脳内状態でした。
自分にとって絶対的なリスペクトの対象である「BAUHAUS」、そのデザインを使わせて頂くからこそ、「芸術の消費」に陥らないように行動と交渉を重ねました。
それを「SILVER925」で作成、様々な工程を経て最終的に僕自身の手によるハンマーワークでリベット留めして完成させる。

 

 

一言で言うと、こんなことやっているブランドは他にないと思います。
少なくとも僕は知りません。
何故なら、極めて効率的ではないからです。

それは全ての要素に言える事で、革は選び得る範囲内において最高級、SILVERという素材自体が高騰を続けているし、そもそも一点一点ハンマーワークでリベット留め、って、、けっこうクレイジーだと我ながら思います。
ですが、ここが最重要ポイントなんです。
今作「BAUHAUS CAP」は、前作にあたる「GUIDI CAP」をあらゆる面で凌駕しないと、その存在自体の意義を成さない、という前提のもと成り立っている企画と位置付けています。
前述した通り、「GUIDI CAP」をいまだ多くの方々にご愛用頂いている、ということは、超シンプルな話、「それでいいじゃん。」な訳です。
前回手に取って頂けなかった方や、新調をご検討の方に向けて、「2年の時間を経て、遂にGUIDI CAPを復刻します!」で、商売的にはOKでした。
だけど、そうではない、「新しい価値と高揚」を創造することを僕自身が望んでいたし、Amanojak.ディレクターの小山さんともそんな熱い話を交わしました。(ピザ屋にて。)
そして何より、prasthanaを見て下さっている方々もきっと同じであろうと。
更に言うと、「BAUHAUS」の理念とは「常に新しいデザインを創造すること」。
スマートな経営というか、なんて言うか、そういった賢い商売の仕方(?)とは残念ながら真逆に位置するような、でも僕達にとって最も重要な、美意識や美的感覚という領域における全ての要素が符合したからこそ、「GUIDI CAP」で表現した価値を更新する新しい創造としての「BAUHAUS CAP」を目指しました。

そんな自らに課したハードルを越えるには、「異次元の美意識」が必要不可欠でした。
「非効率的とか言ってられませんよこちらは。」ということです。
あ、一応言っておきますが、「非効率的な工程」を良しとする、というか、他の人がやっていないからブルーオーシャンだ、みたいな感覚はマジで全く無くて、「異次元の美意識」を表現する為に必要なプロセス、それがいざやってみたらめっちゃ効率悪かった、というのが全てです。

1919年に「BAUHAUS」が目指した「生活と芸術の統合」を
2024年にprasthanaの解釈で形にしました。

公式のルック画像はprasthanaのインスタグラムアカウントにて、順次公開していきます。
また、この特別なプロダクトの鮮烈なアウトプットの一要素として、40秒程の映像を作成しました。
この映像は、普段からprasthanaと関わってくれている映像作家、音楽家の協力を得て実現に至りました。
こちらもprasthanaのYouTubeチャンネルにて近日内に公開予定ですので、ご期待下さい。

具体的なオーダー方法や、更に突っ込んだ話なんかは、開催2店舗にお問い合わせ下さい。
なお、受注期間は

・prasthana sendagaya store : 2024年1月5日(金)-1月14日(日)
・Amanojak. SENDAGI : 2024年1月3日(水)-1月14日(日)

以上となりますが、期間中も定休日など挟みますので、詳細な営業スケジュールは各店舗にお問い合わせ下さい。

限定的な場所と時間、この熱量と高揚に、多くの方に触れて頂けると嬉しいです。

以上、年末の末まで、熱気冷めやらぬ状態で走り切りました笑
毎度の事ですがまあまあな文字数、お付き合い頂きありがとうございました。

それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。
2024年始、変わらずお会いできる事を楽しみにしております。

宜しくお願い致します。